『大事なこと』
朝7時半、彼はいつも通りの時間に起きて朝食を済ませ
ネクタイを締め、かばんを持って玄関に向かった。
「よし、今日も忘れ物は・・・ないな。」
一つ一つ確認をした。これがいつもの習慣なのだ。
家を出て、会社までの途中、彼はある異変に気がついた。
「はて・・・何か大事な事を忘れてる気が・・・」
ミシン針に糸を通そうとするがうまく入らないような、そんな感じだった。
彼は気のせいだと思いつつも会社へと急いだ。
しかし、会社へ近づけば近づくほどモヤモヤは強まり
それは次第に不安へと変化していった。
「財布は持ってるし、書類も定期もある・・・ふむ、いったい何を忘れたのだろう?」
忘れようとするがクモの糸のように絡み付いてくる。
結局、モヤモヤの正体がつかめぬまま彼は会社へたどり着いた。
そして、彼は会社の入り口を見て愕然とした。
『本日、定休日』